伝染性紅斑(リンゴ病)について

ウイルス感染症

正式名称は「伝染性紅斑」ですが、一般的に「リンゴ病」と呼ばれています。ヒトパルボウイルスB19(ウイルスの中でも最小といわれるウイルス)の感染が原因の感染症で、小児(ほとんどは10歳以下)に多く見られますが、成人でも罹ることがあります。

両頬がリンゴのように赤くなることが特徴で、「リンゴ病」と呼ばれています。頬が赤くなった後に手や足に発疹が現れることがあります。

このところ、流行が見られていなかったのですが、最近、首都圏で感染が拡大しているとの情報があります。まだ、全国レベルの流行にはなっていないとのことです。

感染経路は、飛沫感染と接触感染なので、集団の中に感染した子どもがいる場合には容易にうつってしまいます。

問題は、この感染症の特徴である「赤いほっぺ」になるころには、すでにウイルスの排出時期は終わっている(頬が赤くなる1週間から10日ほど前がウイルスを放出しているピークの時期)点にあります。このことから、子どもが集団生活をしている保育園や幼稚園ではこのウイルスの感染を予防することが難しくなっています。

ほとんどの子どもは小児の時期に感染し、強い免疫が誘導され終生免疫が得られます。したがって、再感染することはないとされています。

成人でも抗体が陰性の人は感染する可能性があります。特に、大人の女性が感染すると関節痛で歩行が困難になる場合があります。

特に注意が必要なのは、妊婦の場合です。妊婦が感染すると胎児への影響(胎児の異常や流産など)が起こることがあります。このような胎児への母子感染は「風しん」で多くの情報があります。その風しんと同様、この伝染性紅斑の場合にも妊娠前半期に感染すると影響が出やすくなります。

このウイルスに感染すると、大量のウイルスを放出しますが、実験室でウイルスを増殖させることができる細胞培養系が確立されていません。そのため研究がしづらい厄介なウイルスといえます。したがって、この感染症に対するワクチンや抗ウイルス剤を開発することが大変難しい状況です。

パルボウイルスB19は、赤芽球前駆細胞(この細胞が分化すると赤芽球になり、最終的に赤血球になります)に感染します。この細胞表面のP抗原をレセプターとして感染を成立させています。このウイルス感染実験を実施するためには、まずウイルスを手に入れなければなりません。そのためには、このウイルスに感染した人の血液を入手することから始まります。日本赤十字社の許可が得られればですが、献血血液の中でパルボウイルスB19陽性の血液が見つかった場合(日本赤十字社血液センターでは、ヒトパルボウイルスB19以外にも、エイズウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス-1型(HTLV-1)、B型肝炎ウイルス、C型可燃ウイルス、E型肝炎ウイルス、梅毒トレポネーマなどの検査を実施しいます)に、その分与をお願いするところから始める必要があります。上記のように、ほとんどの人は子ども時代にこのウイルスに感染していますので、献血できる年齢(男性は17歳から69歳、女性は18歳から69歳)の人からこのウイルス陽性例が見つかることはほとんどなく、気長に陽性例が現れるのを待つ必要があります。もし1例でも見つかり、その血液を入手できれば、ウイルス量は高濃度に含まれていますので、ウイルス源として使うには十分です。次に、上記にように、細胞表面のグロボシド(赤血球血液型のP血液型を規定するP抗原)であることが明らかにされていますので、この抗原の発現が認められ(場合によっては、P抗原を遺伝子操作技術で人工的に発現させることも可能かもしれません)、しかも細胞培養できる細胞について、順次どの程度のウイルス増殖が認められるのか、について検討することから始める必要があります。

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