新型コロナの収束ムードが日増しに高まり、人々の行き来が活発化している。これは世界的な現象で、当然、日本と海外の間も同じである。
日本人旅行者やビジネスマンが海外に行き、現地で流行っている感染症に罹っても、帰国時にまだ症状がでていなければ、成田国際空港や関西国際空港の検疫所で止められることなく帰国できる。海外からの旅行者やビジネスマンも同じ状況で入国できる。そして、帰国・入国後数日で症状がでて、医療施設を受診し、そこで初めて、麻しんなどの輸入感染症に罹っていることが判るのである。現在の診断はPCR検査がほとんどであり、結果が本人に届けられるまでに数日を要する。その間、次の病院を受診するなどを繰り返すことが多く、そこでの濃厚接触者を多数発生させるため、PCR検査に追われることにつながっている。
2018~2019年の麻しんの大流行も、沖縄観光に訪日した台湾人が多くの日本人にうつしていたことが発覚したが、その時はすでに名古屋など、本島の各地に飛び火したことが次々と判明した。2020年の新型コロナの日本での最初の患者も、横浜在住の中国人(武漢出身)が春節で中国へ帰省し、日本に戻った数日後に症状がでて、医療施設を受診したところ、新型コロナ第1号であった。
このように、輸入感染症を水際で止めるための方法を考えるべき時に来ている。新型コロナにみられるように、あまりにも高い検出感度を求めるあまり、PCR検査一辺倒になっているが、時間がかかり(費用も高くつく)、水際の対策としては適さないことは明らかである。現在、麻しんや風しんに対する日本の対策は、2回のワクチン接種をしていない人(これまで接種をしたことがない、もしくは1回しか接種していない人)に、ワクチン接種を勧めることである。しかし、働き盛りの人たちは忙しく、なかなか進んでワクチン接種をする流れになっていないようである。
そこで、麻しんなどの輸入感染症には、感染しているかどうかの検査が10~15分と、迅速に診断できるイムノクロマト法の開発が急がれる。世界的にも、まだ開発されていないが、もし麻しんの感染を迅速に診断できるキットが開発されれば、検疫所で感染者を止めることができる。たとえ入国後、もしくは帰国後に症状が現れても、その濃厚接触者をこのキットで検査することで、かなり感染拡大は抑えられると考えられる(図)。