ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスとムンプスワクチン

ウイルス感染症

ムンプス(「おたふくかぜ」とか「流行性耳下腺炎」とも呼ばれる)は、ムンプスウイルスによる全身性のウイルス感染症で、耳の後ろから顎にかけての唾液腺(特に耳下腺)が腫れる病気です。感染から発症までの潜伏期間は通常16~18日、腫れは2日以上続きます。

ムンプスウイルスは感染者の唾液中に多く含まれており、咳をしたり、舐めたりしてウイルスが付着した玩具やタオルなどを通して感染が広がります。症状には、頭痛、吐き気・嘔吐、発熱などが認められます。ムンプスにかかり熱が出た場合、それだけでも頭が痛くなることはありますが、発熱や頭痛に加えて吐き気や嘔吐も見られる場合には、髄膜炎を合併している可能性があります。

予後は通常良好ですが、片側性(まれに両側性)の感音難聴(聞こえにくさ)や顔面神経麻痺(顔の筋肉の動かしにくさ)など、永続的な後遺症が残ることもあります。また、感染後脳炎、急性小脳性運動失調(小脳の機能障害)、横断性脊髄炎(脊髄の損傷)、および多発性神経炎(複数の神経が炎症を起こす病気)の発症などの重症化がまれに発生します。

おたふくかぜの合併症としては無菌性髄膜炎、ムンプス難聴、脳炎、睾丸炎(精巣炎)、卵巣炎、膵炎などが報告されています。思春期の頃におたふくかぜにかかった人のうち、数%の人が睾丸炎(症状としては発熱、睾丸腫脹)を合併しますが、男性不妊の原因となることは極めてまれです。

本邦ではムンプスワクチンの定期接種化に向けて議論が行われてきましたが、ムンプスワクチンは、2024年4月23日から麻しん(はしか)、風しん、ムンプス(おたふくかぜ)の3種混合ワクチン(MMRワクチン)として定期接種が再開されました。3種類のワクチンはいずれも生ウイルスワクチンなので、妊婦は接種できません。

ムンプスワクチンの副反応として無菌性髄膜炎(症状としては発熱、頭痛、嘔吐)が発生することがあります。多くは、接種後3週間前後に発症します。ムンプスウイルスが自然感染した時にも無菌性髄膜炎が発生することがあり、ワクチン接種時の頻度に比べると、その頻度は有意に多く現れるので、ワクチン接種が推奨されます。

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