ヒトに感染するインフルエンザウイルスは、主にA型、B型、C型の3種類に分類されます。これら3つの型のインフルエンザウイルスは、からだに備わっている免疫の反応からは区別され、別のウイルスとして認識されます。A型インフルエンザウイルスはさらに多くのタイプ(H1N1やH3N2など)が存在し、ヒト以外にも多くの動物に感染が広がっています。B型とC型はヒトのみが感染し、遺伝子変異を起こしにくいためA型のように多くのタイプは存在していません
例年、年末から翌年の1月から2月ごろまでA型インフルエンザウイルスが流行し、その後、B型インフルエンザウイルスが流行り始めます。
現在、A型インフルエンザウイルスが猛威を振るっています。今シーズンは早くもB型インフルエンザウイルスがちらほら見られ、これから本格的にB型インフルエンザが流行り始めます。
予防策の徹底: 基本的な感染予防策を徹底することで、インフルエンザの感染リスクを大幅に減らすことができます。
A型インフルエンザウイルス
- 特徴: A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面のヘマグルチニン(HA*)とノイラミニダーゼ(NA*)の組み合わせにより多くの亜型に分かれ、トリやブタなど、多くの動物にも感染します。
- ヒトに感染するA型インフルエンザウイルスにはH1N1(現在はH1N1pdm09)とH3N2が存在します。
- ヒト以外にもトリやブタも感染しますので、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1など)も、稀にヒトに感染する場合があります。また、2009年に世界的に大流行したH1N1pdm09ウイルスはブタのウイルスが、ヒトへの感染性を獲得し、世界中で一気にヒトに感染が広がったものでした。このウイルスは、それまで人類は誰も罹ったことがない、すなわち誰もこのウイルスに対する免疫を持っていなかったために世界大流行(パンデミックと呼ばれ、これがこのウイルスの名前に付いているpdmの由来)を起こしました。このウイルスが、その後はヒトの季節性インフルエンザウイルスとして定着し、現在に至っており、現在猛威を振るっているウイルスがこの2009年の世界大流行に由来するウイルスです。
- 症状: 高熱(38度以上)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛、咳、鼻水などが急に現れます。
- 注意点: 小児や高齢者、また基礎疾患を持つ人は重症化しやすいため、早期のワクチン接種が推奨されます。
B型インフルエンザウイルス
- 特徴: B型インフルエンザはヒトにしか感染せず、A型と同様に冬季に流行します。
- 症状: A型とほぼ同じですが、症状がやや軽いことが多いです。嘔吐や下痢を伴うことがあります。
- 注意点: A型と同様に、ワクチン接種が重要です。また、手洗いやマスクの着用などの基本的な感染予防策も有効です。B型ウイルスには、ビクトリア系統と山形系統の2種類の存在が知られていたことで、インフルエンザワクチンには、A型を2種類(H1N1とH3N2)とB型の2種類(ビクトリア系統と山形系統)の抗原が含まれています。ただ、山形系統は最近、世界的に見当たらなくなったことで、今後、この山形系統のウイルス抗原を除く、A型2種類とB型1種類のワクチンになる可能性が高いです。
C型インフルエンザウイルス
- 特徴: C型インフルエンザは主に小児に感染し、一度かかると再感染することはほとんどありません。
- 症状: 発熱、咳、鼻水が主な症状で、A型やB型に比べて軽いことが多いです。
- 注意点: 高齢者が感染することは稀ですが、家庭内での感染拡大を防ぐために注意が必要です。
注意点と喚起事項
- ワクチン接種: 高齢者や基礎疾患を持つ人は、インフルエンザワクチンを毎年接種することが推奨されます。ワクチンは重症化を防ぐ効果があります(感染予防には、のどなどの呼吸器系の粘膜に免疫活性の抗体の産生を促すワクチンが必要です。
- 基本的な感染予防策: 手洗い、うがい、マスクの着用、適切な換気を心がけましょう。
- 早期の医療機関受診: インフルエンザの症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
- 予防策の徹底: 基本的な感染予防策を徹底することで、インフルエンザの感染リスクを大幅に減らすことができます。
- ワクチンの効果: ワクチンを接種することで、インフルエンザにかかっても重症化を防ぐことができます。ただし、感染を防御できる免疫応答は十分でないと考えられており、ワクチンを接種しても感染を防ぐことは難しいです。感染予防には、のどなどの呼吸器系の粘膜に免疫活性のある抗体の産生を促すワクチンが必要です。最近、粘膜免疫の誘導が期待できる生ワクチン<輸入品であるフルミスト>が認可されました。
*免疫の反応から区別できるHAは16タイプ、NAは9タイプの存在が知られているので、16 (H1~H16) と 9 (N1~N9) との組み合わせから、16 x 9 = 144タイプが産まれる可能性があります。現在、ヒトに感染するインフルエンザウイルスA型は、H1N1とH3N2です。