「RSウイルス」と、ウイルスの名前になっているRSとは?
- RSウイルス=respiratory syncytial virus=呼吸器合胞体ウイルス(のどや気管支などの呼吸器に感染すると合胞体とかシンシチウムといわれる大きな細胞を出現させるウイルス)
- 合法体とは、ウイルスに感染した細胞(感染細胞表面には、ウイルス外側のたんぱく質が突き出ています)と、まだ感染していない細胞(非感染細胞表面には、ウイルス表面のたんぱく質と結合するレセプターとなる成分が突き出ています)がお互いに結合することで、細胞融合が起こります。
- RSウイルスはパラミクソウイルス科に属しており、同じ仲間に細胞融合することで有名なセンダイウイルス(HVJ、hemagglutination virus of Japan)や、他には麻しんウイルスもこのウイルス科に属しています。細胞融合するウイルスは多く、コロナウイルスやHIV、ヘルペスウイルスなどがあります。
どのような病気を引き起こすのか?
- 日本を含む世界中のほとんどの国に分布しています。
- 生後1歳までに半数以上が、2歳までにはほとんどの小児が感染し、何度も感染・発病を繰り返します。
- 特に、基礎疾患を持った小児(早産児、心臓や肺に基礎疾患を持っている生後24か月以下の小児、また神経・筋疾患や免疫不全の基礎疾患を持った小児など)が感染すると、重症化するリスクが高いといわれています。
- 小児だけではなく、高齢者も慢性呼吸器疾患などの基礎疾患を持っていると重症化しやすいといわれています。
- 流行には季節性があります。秋にピークが見られていましたが、2021年以降は夏にピークが見られるようになっています。
- どこにでも存在するウイルスですが、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスのような効果的な抗ウイルス薬が開発されていないため、感染で重症化する可能性がある小児や高齢者は注意が必要です。
対応策はあるのか?
- RSウイルスに対する中和抗体(シナジス)が抗体医薬として開発されており、小児でリスクが高いと判断される場合には、予防的に投与(月1回の筋肉内注射;保険適用)されています。
- 組換えRSウイルスワクチンがグラクソ・スミスクライン(GSK)社により開発されました。2023年5月に欧米で承認され、日本においても2024年1月に、「60歳以上の者におけるRSウイルスによる感染症の予防」が承認されました。さらに、ファイザー社による組換えRSウイルスワクチンも開発され、現在「妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防」を適応症として、販売に向けた準備が進められています。