蚊が媒介する感染症

感染症あれこれ

蚊が媒介する感染症には、①デング熱、②日本脳炎、③マラリア、④チクングニヤ熱、⑤ジカウイルス感染症、⑥黄熱、⑦ウェストナイル熱などがある。

今回の話題は、デング熱と日本脳炎についてである。

今の時期、蚊に刺されることが多いが、おもしろいことに地域によって表現が異なっている。

  • 蚊に刺される(一般的・標準語)
  • 蚊にかまれる(京都・奈良・和歌山以西に多い)
  • 蚊に食われる(福井・滋賀・三重以東で多い)




       

蚊の種類

蚊にもいろいろな種類があり、媒介する感染症も異なっている。特に、熱帯地域では蚊が媒介する感染症が多く、初めて訪れるような国では、ほとんどの日本人が、それらの国で蔓延している感染症に対する免疫を持っていないため、感染しやすく、また重症化するリスクも高いと考えられる。

海外旅行計画をしている人

海外旅行を計画している人は、旅行を予定している国ではどのような蚊がどのような感染症を媒介しているのか、そのような蚊が活発に行動する時間帯はいつかなどを知っておくことも大事である。

日本に生息している蚊

・日本にも蚊は生息しているので、海外から持ち込まれた感染症を持った人を刺して、それを体内に持った蚊に刺された人が、感染症をうつされる可能性があることを考えて、蚊対策をとることが大事である。

・特に、蚊の習性を知っておくことも大切である。

赤字の蚊は日本にも生息している。

  • デング熱:ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ(朝と夕方に活発)
  • 日本脳炎:コガタアカイエカ(夕方に活発)
  • マラリア:ハマダラカ
  • チクングニヤ熱:ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ
  • ジカウイルス感染症:ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ
  • 黄熱:ネッタイシマカ、(ヒトスジシマカについてはまだ確認されていない)
  • ウェストナイル熱アカイエカ

デング熱

・2014年の世界のデング熱患者数は過去最高で、日本でも輸入症例が2倍以上といわれている。

デングウイルスに感染した蚊に刺されることで発症(高熱、頭痛、関節痛、発疹など

東南アジアや南米の熱帯地域に多い感染症で、ネッタイシマカという蚊がデングウイルスを媒介

・日本には毎年、輸入感染症として、蚊に刺されて感染している人がまだ症状が出る前に(日本人なら)帰国し、もしくは(外国人なら)持ち込み、日本でデング熱を発症

・2014年8月に、代々木公園でデング熱患者発生(海外渡航歴がなく、日本で蚊に刺された結果と考えられる)。この患者は、輸入感染したデングウイルス保有者を刺した蚊に刺されたために発症したと考えられた。

・日本にはネッタイシマカはいないが、同じくデングウイルスを媒介するヒトスジシマカが東北地方まで生息し、こちらが媒介したと考えられた。

・ワクチンは、フランスのサノフィパスツール社が史上初のデング熱ワクチンを開発し、メキシコでの認可をはじめ、世界の20か国で使用されるに至った。しかし、2016年、フィリピンで公的デング熱ワクチン接種プログラムを開始し、デング熱既感染者には重症化の予防効果が認められたが、一方のデング熱未感染者においては、逆に重症化のリスクが高まった。この成績を踏まえ、2017年に公的接種の中止が発表された(渡邊浩、デング熱ワクチンの経緯:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/5/108_962/_pdf)。

 その後、武田薬品工業が弱毒生デング熱ワクチンを開発し、これまでに、EU、英国、ブラジル、アルゼンチン、インドネシア、タイ、マレーシアなどで接種可能とのことである。

日本脳炎

・日本脳炎ウイルスに感染した蚊に刺されることで発症(高熱、頭痛、嘔吐、意識障害などの症状が現れ、重症化すると脳炎を引き起こすことがある)

・日本脳炎とは、コガタアカイエカと呼ばれる蚊に刺され、日本脳炎ウイルスに感染することで発症するウイルス感染症である。感染してもほとんどの人は症状が現れない。しかし、感染者のおよそ100~1,000人に1人の割合で脳炎を発症し、意識障害や痙攣(けいれん)などをきたすことがある。

・日本脳炎ウイルスは極東から東南アジア、南アジアに広く分布し、家畜として飼育されるブタなどの体内に生息している。コガタアカイエカは、ブタの血液を吸い、その蚊が人を刺すことで日本脳炎ウイルスがブタから人間に感染する(すなわち、蚊が媒介)。

・日本でも1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の患者が発生し、飼育しているブタに日本脳炎ウイルスが蔓延している地域で多くの患者が発生していた。今では、ブタ、ヒトの感染例は数例になっている。

・日本脳炎は、発症すると致死的になりうる病気。しかし、日本ではワクチン接種によって予防が可能。最近の日本では、年間10人前後の発症数で推移。ワクチン接種を行うことが重要。

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