新型コロナまん延状況が収束すると、次は麻しん(はしか)のアウトブレイクが起こるかも?

感染症あれこれ

   わが国の新型コロナのまん延状況はなかなか収束するような状況にないが、欧米各国はワクチン接種が飛躍的に進み、今や格段の状況改善が認められるまでになっている。世界的に、このまま新型コロナの状況が改善されると、次にどのような感染症が発生する懸念があるのだろうか?

 新型コロナという新しい感染症が現れ、世界中を恐怖に陥れ、マスクが日常的な習慣になり、またアルコール消毒やこまめな手洗いも習慣になると、インフルエンザやノロなど、毎年悩まされていた感染症が影を潜めてしまっている。勿論、水痘ウイルスなど、そもそも小児期に感染し、その後も終生からだに取り付いているウイルスは、新型コロナ発生後のマスクや消毒・手洗いには影響を受けないどころか、コロナ禍で精神的な疲れからか、逆に患者が増えているようである。

 そこで、ワクチンの接種が進んで新型コロナが収束すると、その後はどのような感染症が姿を現わすのか、気になるところである。これまでも、定期的なアウトブレイクを起こし、世界的にもなかなかこの地球上から排除できない麻しん(はしか)が挙げられる。

 麻しんは、歴史的に最も人類を苦しめてきた、致死率の高い感染症である。近年では、ワクチンが開発され、このワクチンを2回接種することが唯一の予防策になっている。治療薬はない。しかし、問題はこのワクチン接種を2回きっちりできていない人たちが、かなりの割合で存在することである。

 日本の場合は、麻疹を含む混合生ワクチン(MMR)の接種により、異常に高い割合で副反応が起きた時期があり、その後の一定期間ワクチン接種年齢であった世代は、ワクチンの接種ができてない。日本の場合は、2015年に世界保健機関(WHO)西太平洋地域麻しん排除認定委員会より、「日本は麻しんの排除状態にある」との認定を受けたが、その後も麻しん患者が発生している。これは、日本の土着型の麻しんが原因ではなく、海外で感染した人(外国人)が日本に持ち込む、または日本人が海外に出かけ、そこで感染した状態で持ち帰ってくる(これを輸入感染症と呼ぶ)ことが原因といわれている。

 麻しんは、空気感染する数少ない感染症である。持ち込んだ人や持ち帰った人の周辺にワクチン接種をしていない、もしくは1回しか接種していない人がいれば、容易にうつされてしまう。発熱などの症状が現れた人が、最初に受診した医療機関で的確に診断されずに症状が治まらず、次々に病院を回ったために一瞬にして広げてしまったという過去の例もある。また、感染した人が発症前に別の町に移動し、その町に飛び火し、そこでアウトブレイクを起こす場合もある。

 世界的には、2019年の麻しんによる死亡者数は20万7500人にも上るという。わが国も、2019年は745例の感染者が報告されている。それ以降は数名程度の感染者で収まっているが、新型コロナの状況が改善され、当時の緊張がゆるむことを狙い撃ちされて麻しんの大流行が起こらないように、気を引き締めてかかる必要がある。新型コロナ禍で、小児の2回の麻しんワクチン(実際には麻しんと風しんの混合(MR)ワクチン)接種率が低下しているようである。麻しんに狙い撃ちされないためにも、定期接種のワクチンは必ず接種しておくことが重要である。




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